クソ小説

今日は朝9時から部活がある。

外ではセミが忙しなく鳴いていて、水筒に入った氷がぶつかる音がいやでも夏を強調する。道具がはいったエナメルバッグを左肩にかけて僕は玄関を出た。シャアシャアと鳴く虫が頭の中にへばりつくのが嫌で僕はすぐに木のある方から遠ざかった。学校への道は2つのルートがあって、通学で使っているのは左のルートだ。右のルートは薄暗い路地裏を抜けなければいけない。武道場が近いのは右のルートだから、僕は右のルートを選んだと僕は思った。

薄暗い路地裏の入り口にたどり着くともうセミの鳴き声は聞こえなくなって、代わりに汲み取り式トイレのあの臭いが僕の頭の8割を占めていた。この一本道を40mほどいくとそこそこ大きな道にでる。ここからは先が見えないけれど、この道は何回も通ったことがあるから何も怖くなかった。コンクリートの外壁が太陽を遮って一番薄暗くなるところに差し掛かったところで、脳が危険なものを認識するよりも先行して脊髄反射的な運動が左足に作用した。長さは30cmくらいあって、太さは僕の親指ぐらいあった。黒くて、足がいっぱいある。でも100本はなさそうだ。これ以上先に進むことはできないと思った。怖いというより、そこに壁があるかのようなポテンシャルが生じてしまった。このポテンシャルが部活に行きたくない僕の気持ちを加速させた。

踵を返したところ、そこには全身肌色の人がいた。乳房は少し垂れていて、さつまいものような色の対がやたらと目を引いた。少し下に視線をやると、黒かった。僕は走って全身に力を込めてその人に突進し、押し倒した。